1995年頃私は当時属していた会社の駐在員としてベルギーのブリュッセルに住んでいました 小さなアパートを借り、そこを拠点に本社からの出張者の日程調整や出張同行、通訳、その他ヨーロッパ各地で行われる展示ショーでの市場調査とその報告活動をしていました この『キリスト生誕』を見つけたのも出張者に同行してドイツを旅していた時でした ドイツ　フランクフルト空港で出張者二人をピックアップし、モーターショーを数日調査した後、ミュンヘンへ向けてアウトバーンを自動車で移動する途中、ニュルンベルクで一泊した日のことでした 出張者たちと旧市街のレストランで腹を満たした後、彼らをホテルに送り届けてから私は一人で夜のニュルンベルクの街を歩いていました その時でした 大聖堂の横を通って太い通りに出ると、不思議なことに大きな眩い光が小刻みに揺れているのが見えたのです まるで「こっちにおいで」と呼ばれているようでした 私はその光に誘われるままついて行くと、一軒の美術品店のショーウィンドウに行き着きました その大きなショーウィンドウの真ん中に一つ置かれていたのが、この『キリスト生誕』の木彫作品です 私は宗教は好きではありませんが、宗教美術や宗教建築にはそれなりの知識と興味がありましたので、その作品が生まれたばかりのキリストとその生誕を祝う三人の天使であることはすぐに解りました 美大を卒業した私は、その彫刻の素晴らしさにもすぐに気付きました。一つの木片から人の手のみで削り出されており、作者は一度の失敗もなく完璧にこの作品をまるで神がかったようにして削り出したのです 躍動感ある三天使のその眼差しは赤子のキリストに優しい微笑を注いでいます。一人は弦楽器を奏で、一人は笛を鳴らし、一人は布を広げていますが、三天使のバランスもそれぞれの天使のポーズも自然でいて且つ美しい。キリストの表情も秀逸で全てが完璧です いや奇跡です 一眼で欲しいと思った私は価格を見て愕然としました 2000マルク＝（当時）約14万円 当然の価格でしょう。小さいながらもこの作品には魂が篭っています 私は一度通り過ぎ頭の中で自分の銀行残高を考えました その後何度もその店の前をウロウロした私は決断して店の扉を開きました 『キリスト生誕』 高さ150mm　幅77mm　奥行61mm （冷やかし質問はご遠慮ください）